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A Chapter Called Children of Bodomのレビュー。さらば、おれのギターヒーロー

A Chapter Called Children of Bodomは2019年12月Children of Bodomの最終公演として行われたライブです。今回、本ライブが音源化されましたのでレビューを綴ります。

結論を先に述べます。今すぐきいてください。

childrenofbodom.lnk.to

振り返り

今思えば、後期チルボドに対する評価は散々でした。Are You Dead Yet?まではまだしも、それ以降は私の好みに合うことはありませんでした。

大方の予想はついていて、主にRoopeの影響が大きいです。Roopeを批難するわけではないのですが、彼のヘヴィネス思考はチルボドにとって良い影響を与えていたと思いません。事実、彼はチルボドから無情な解雇をされています。

その後ギターがAlexiのみのI Worship Chaosアルバムも煮えきらない内容となり、チルボドはグダグダとした煮えきらないバンドになっていました。

しかしバンドは大きな転機を迎えました。新ギタリストDanielの加入です。Danielは元々Alexiと親交がありました。Danielは最終キャリアであるNorther以降はフリーの状態が続いており、チルボドへの加入がされました。しかし、当初Danielの参加に対して、私は肯定的でない見方をしていました。Northerは明らかなチルボドのフォローバンド、言い方を悪くすれば模倣バンドのようなものだったからです。そんなギタリストを連れてきてどうするんだよと当時は思っていました。

程なくして彼の加入後のブートレグが流れるようになりました。良い。とにかく堅実な立ち回りをしており、非常に安定感のあるリズムギターでした。Roopeのライブはとにかく雑でバンド内での悪影響が強かったのだと、Danielを見て気付かされました。

その後バンドはDanielを迎え入れた状態でアルバムを制作します。2019年3月発売の「Hexed」です。Hexedは、後期のグダグダチルボドに愛想をつかした方が多いのか、レビュー自体も多く見かけません。私ははっきりと言います。このアルバムはチルボドのまさに集大成です。もっといえば、Hate Crew Deathroll の次にこのアルバムがもし出ていれば、チルボドはフェスのヘッドライナーを張るぐらいになりえたでしょう。

とにかくDanielがいい仕事をしています。Alexiも今まで貯めていたアイディアを放出したかのごとく、怒涛のメロディセンスをひからせています。そして後期以降存在が薄いと言われていたキーボードJanneがここにきて大爆発。絶妙と言わざるをえないキーボードワークを繰り広げています。

 

そんなかなり明るい兆しの中、信じられないニュースが舞い込んできます。ベースHenkka、ドラムのJaska、キーボードのJanneの三名が脱退するというニュースです。脱退という体ですが、彼ら三人が抜けるということは、チルボドが事実上解散するということでした。

こんなにもいいアルバムを作った直後なのに…非常に残念に思いました。
そして2019年12月、脱退ニュース1ヶ月後にヘルシンキにて『A Chapter Called Children of Bodom』と銘打たれた解散ライブが行われました。

その後AlexiとDanielはバンド「Bodom After Midnight」を立ち上げ、活動を再開します。AlexiはDanielのことをやはり相当気に入っていたのか、Paint the Sky with BloodというシングルではDanielがソロを弾く部分もあります。チルボドではAlexiが必ずソロを弾いていたので大きな信頼をしていた面を見ることができます。そして、新バンドでの活動も期待されていた矢先でした。

 

2020年12月末、Alexi Laihoが病気で亡くなります。

 

ショックと共に、やはりダメだったのかという気持ちがありました。

 

当時Alexiを追っていた方ならわかると思いますが、Alexiは時間が経つほど、信じらないほど激ヤセしていっていました。
最初のほうでは「おいおいAlexi、サンドウィッチを食ったほうがいいんじゃないのか?w」と動画のコメントで茶化されていましたが、年月が経つたびに痩せこけていく彼が出演するごとに、コメント欄がだんだん笑えなくなっていたのを今でも覚えています。「Alexi、お前本当に大丈夫なのか…?」
Alexiは最後まで自分の健康状態について述べることはなかったため、死後直後は憶測が飛び交う状態となりました。最終的には内縁の妻より公表され、「アルコール性の肝臓と膵臓組織の障害」が原因で亡くなっています。検死にて、鎮痛剤、オピオイド不眠症の薬を使用したあとがあり、これらの薬物を濫用していた可能性もあります。

lmusic.tokyo

時は流れ2023年12月、最終ライブである『A Chapter Called Children of Bodom』がリリースされました。

チルボドの正式なライブ盤はこれまで2つありました。Tokyo Warhearts - Live In Japan 1999とChaos Ridden Yearsです。
Tokyo Warheartsは演奏はいいのですが、音質が残念です。また、まだ2枚のアルバムしかない時期なので、曲目にバラエティが少ないです。
Chaos Ridden Yearsはチルボドのライブ盤として有名ですが、私は非常に気に入っていません。音質はいいのですが、演奏が雑ですし、チルボドの一番迷走していた時期の音作りで聞くのがかなり疲れます。

アルバムの感想(前説を飛ばしたい方はこちらから)

A Chapter Called Children of Bodomはこれらの問題を完全に払拭しています。

まず、キャリアの最終地点とも言える曲のバラエティさが楽しいです。チルボドにも黄金期、そして先述したグダグダ期があります。どの時期の曲もやってくれています。そう、本ライブは全アルバムの曲を一つは演奏しています。かなり粋な演出です。

次に、演奏の質です。もうチルボドの真骨頂が堪能できます。彼らの大きな点は、今どきの同期システムを使っていないことにあります。同期システムは曲の幅を拡げることが反面、テンポの変更ができません。テンポはそのライブの熱に左右されます。同期システムにその熱が邪魔されるのは私はいいことだとおもっていません。
そしてテンポが本当にぶっ飛んでいます。走っているのではなく、その会場の熱が直接伝わってきます。5曲目のBodom Beach Terrorなんか最初間違って倍速再生してるのかと疑いました。
原曲に忠実なのも好みです。16曲目のHate Crew Deathrollはソロ後に合唱する、マジで嫌いな演出がありましたがそれもなくなっています。2018年頃のライブから辞めているようです。17曲目のLake Bodomも、イントロが無駄にアレンジされたものが主流でしたがきちんと原曲通りに弾かれています。そういったコンセプトなのだと伝わってきます。
そして18曲目 Downfall、ギターとキーボードのユニゾンソロではいつものようにAlexiがJanneのところに向かい、隣り合ってソロを弾いてます(こちらはブートレグにて確認)。こんな息ぴったりなメンバーが仲違いで解散するなんて…

最後にアルバムのジャケット。ファーストアルバムのSomething Wildのような赤色です。そして死神の後ろには大勢の人?がいます。ずっと後ろに誰もいなかった死神に人がいるというのは、これがファンを表しており、それに対する感謝ということでしょうか。

 

Children of Bodomの最終アルバムは最高の形で締められました。同時に、もうAlexiがいなくてこの演奏をきくことができないという虚しさにも気付かされました。

このアルバムを出す決断をした関係者の方々に大きな感謝をします。ありがとう。

そして、さらば、おれのギターヒーロー Alexi Laiho。